コロナ禍ではじめたゲームセンターでのアルバイト(専門学校生 京さん)
「いらっしゃいませー!こんにちはー!」
朝10時、自動ドアの鍵を開ける。
スイッチは押さず、開きっぱなしにした状態で、入ってきたお客様に挨拶。ちなみにドアのスイッチは15分後に付ける。コロナ対策の換気のためだ。
そのままカウンターに向かう。常連さんがやってきて、受付が必要なゲームの手続きを行う。
今日も、私はゲームセンターでアルバイトする。
今まで生きてきて、『ゲームセンター』なるものに行ったことは、まったくと言っていいほどなかった。そんな私が何故、アルバイトを始めたかというと、いくつかの理由が挙げられる。
まず、私はもう一つ居酒屋でアルバイトしているのだが、そこから近い職場であること。
仲の良い友達が、しばらくそこでアルバイトしていたこと。
今までやっていた家庭教師のアルバイトを辞めた時、丁度アルバイト募集をしていたこと。などなど…これらの理由から、私はゲームセンターでバイトすることを決めた。居酒屋との掛け持ちということで、週1、2回からOKという募集内容も有り難かった。
私は、国立工業高等専門学校、通称高専に通っていたのだが、この時はその高専を卒業し、専攻科という高専に5年通った後進学できるところに入学したところだった。将来は大学院に進学することも考えていて、お金を貯めなければいけなかった。私の家はお世辞にも金持ちとは言えず、なんなら貧乏な部類に入るため、専攻科や大学院の資金は自分で払わなければいけなかったのだ。
当時やっていた家庭教師は時給は高いが、あまり頻繁には入れないし、プレッシャーもきつい。そんな訳で、受け持っていた1人の生徒を合格させたのを期に、辞めることにした。しかし、居酒屋バイトだけでは貯金がままならない。そこでゲームセンターでバイトを始めたのだが、時期が悪かった。
私がゲームセンターでアルバイトを始めたのは春…新型コロナウイルスが大流行し始めた時期だったのである。
やっちまった〜って感じ、ほんとに。
正直、アルバイトに応募したときからそう思っていた。受からない、受かってもすぐクビになる、そんな不安が付き纏っていた。
しかし、約1年が経ってもそんなそぶりはないのだから、あの時の自分に大丈夫だと言ってやりたい気分である。
ただ、コロナの影響がゲーセンに無いかというと全くそんなことはなく、私がアルバイトを始めた時、店内にお客さんはほとんどいなかった。
しかも、一度シフトに入って、さあ2回目の出勤というところで全国に緊急事態宣言が発令、それに伴いバイト先のゲーセンも休業となってしまった。
せっかくアルバイトを始めたのに、1か月程無職という現実…学校も夏までオンライン授業に切り替わり、居酒屋バイトも休業のため無し。なんとも辛い時期であった。
この緊急事態宣言でバイトも授業もなかった期間、私は歯痒い気持ちで過ごしていた。
なんせゲーセンのバイト、それまでにたったの一回しか入れなかったのだ。
その一回で教えられたこと、絶対に忘れてしまう。やばい、次入ったらちゃんと仕事できるかな。
そんな気持ちでいっぱいだった。