知らない、大人たちへ(高校生 龍 香好さん)
「残念だけど今回は… 参加しないことにしたよ」
私が所属している演劇部の顧問の1人はそう言った。今年の秋に行われる高校演劇の地区大会の参加の可否についてである。理由は何か。もちろん、コロナ(新型コロナウイルス)だ。
私の学年は、6人の部員がいる。小中高一貫校で、6人中2人は高校から入ってきた新人だ。
私を含む4人は中学からやっているので、4年目になる。大抵の部活では、高校2年生が幹部となるのだが、何せ演劇部には高2がいない。部員0だ。よって、私たち高校1年生が、部活のトップなのである。
死ぬほど参加したかった。大会には、高校生しかキャスト(役者)として出れない。3年間必死に頑張ってきて、やっと大会に出れる年になったのに。殴ろうかと思ったほど悔しさが込み上げてきて、どうしようも無い気持ちに苛まれた。私たちは、何も悪くは無い。悪いのは、全て新型のウイルスである。本当はそうじゃ無いのかもしれない。日本が、海外のようにほとんどの外出を禁じ、法を作り、罰則や罰金を設け、それを忠実に日本人が守っていればここまでのことにならなかったのかもしれない。政治家の人々も、緊急事態宣言を守らなかった国民が悪い、などと思っている人もいるかもしれない。じゃあ学生の立場から言わせていただこう。守れって言われたって無理である。決して「守りたくない」と言っているわけではない。「無理」なのだ。一度自分の立場で考えてみてほしい。自分が高校生の時に、「今日から外にほとんど出ないで、友人とも遊びに行かず、暑い日も必ずマスクをし、他人と距離を保ち、マスクを外すときは一言も会話しないように」と言われたらどうか。多分、いや「絶対」に無理だろう。断言してもいい。高校生なんか、人生の間で一番遊んで、一番勉強する時期なんじゃないだろうか。少なくとも私はそう考えている。その大切な時期に、今までやってきた楽しかったことを禁じられるのだ。その上、正体不明のウイルスのせいで、楽しみにしていた運動会も、文化祭も、修学旅行も全て中止になった。こんなに悲しくて、辛くて、悔しいことはない。
私は、この「ウィズコロナ」の中、自分にできることを考え始めた。