ダレカの物語(大学生 クロさん)

二日ほどして、サイトを確認すると幾つか評価レビューが来ていた。恐る恐るといった感じで、そのレビューをクリックする。初めて他人からの意見が入る、冷や汗が背中を伝い、生唾を飲み込んだ。だが、それは杞憂だった。厳しいものもあったが、ほぼ全てが前向きで、優しい言葉たちだった。同じ小説書きの仲間たちは、温かく私を迎え入れてくれたんだ。

私はその温かいレビューに泣いた。

そして下手でも面白くなくてもいいから、小説書きを続けようと決めた。

時刻はAM五時、書くゾーンに入ってから進められるだけ進めた。文字数を見るといつの間にか五千字を超えていた。前だったら一週間は余裕でかかっていたはずの量だ。

さて、今日は十時から数学の試験だ。試験勉強か、もしくは寝るかして試験に備えるべきだろうか。いや、それは人それぞれのはずだ。私はいまこの物語を紡ぐことが最優先なのだ。苦痛だけど、楽しいこの小説書きに、私はいま夢中なんだ。

物語の世界は自由で、その中の人物は何にでもなれる。コロナの無い世界にも行けるし、コロナの中で苦しみながらも必死に今を生きている人間にもなれる。そして私の大好きな未来の人間にもなれる。

そして今私が書いているのは、「ダレカの物語」だ。その主人公は実際には存在しないダレカであるが、紛れもない私なのだ。だって、私が考え出した、私にしかわからない存在なのだから。私は私の物語を紡いでいるんだ。このオンリーワンへの欲求が私に抱き着いて離れないのだ。

だから私は今も、そしてこれからも物語を紡ぎ続ける。このダレカの物語を。

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