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私が私であるために (大学生 飯塚 帳さん)

「男の子みたいだね」と落胆と奇異を滲ませた声色で何度か言われた事がある。これには私も少し堪えた。どうにも私は自分らしく振る舞おう、表現しようと思うとステレオタイプな男性の特徴を多く有してしまうらしい。コロナ禍になって、マスクが一般化する前は私も女子らしい格好をしていた。似合わないと思っていてもスカートを履き、長髪を束ね、目元だけでも化粧をしていた。そんな娘が突然様変わりしたのだから動揺はするだろう。しかし共感や理解は未だにしてくれない。私も特別話そうとも思わない。いつか理解してもらえる日は来るのか、それすらも分からない。

マスクは人の容姿をある程度没個性にしてくれる。ここまで読む人が読めば「筆者はマスク信者か何か?」と思うだろう。私だってできることならマスク無しで出歩きたい。息苦しいし、蒸れるし。けれどそれに至った経緯や過去を慮らんで、マスクを外せない人がいる事も認めてほしい。

おかしな話だが私はマスクをすることで自分に自信が持てた。コロナ禍になって初めて、私自身のことを知り、表現をすることができた。これは間違いなく私の人生の中で分岐点となる選択だ。私はこの選択ができた自分を誇らしく思う。

私は今、私の事が好きだ。

毎朝セットする短髪、耳に着けたイヤーカフ、ほのかに香るウッディ系の香水、体の線の見えない服、私を表現する全てが私の好きなものだ。それに後悔や後ろめたさは存在しない。

私は胸を張って自分のことを好きだと言える。

自己愛を煩わしく思う人もいるが、この世の中は詰まるところ他人と自分しかいない。自分を肯定しないまま、他人と付き合うのは常に罪悪感が付きまとう。誠実な人間関係を築く第一歩として、ある程度の自己愛は必要不可欠だろう。

私が私であるために、自分のしたいことを様々な形で表現する。コロナ禍によって変わった世情が私に自信を与えてくれた。

私はこれからも私らしく生きていくつもりだ。