• HOME
  • 学生
  • リスタート(高校生 朝田さやかさん)

リスタート(高校生 朝田さやかさん)

頭の中に鳴り響いたのは、体育館でバレーボールが弾む音だった。手のひらで打ちつけたボールが、体育館の床に刺さる音。

「雪ちゃん、次のバレーの大会一緒に出ない?」

昼食を終えた昼休み、私がちょうど小説を書いているところだった。突然現れたバレー部の同級生三人に机を囲まれ、何が始まるのかと身構えた刹那言われた言葉。

「えーっと」

「インターハイが中止になって、その代替試合に出てくれる助っ人を探してて。今、部員が私たち三人だけだから、あと三人集めたくて」

懇願する三人の顔が見える。自分で自惚れたくはないけれど、きっと、私にはどうしても声をかけたかったに違いない。

「ちょっとだけ、考えさせて」

「うん。けど、来週中には返事してくれるとありがたい」

「分かった」

私の元を離れた三人は、うちのクラスの委員長にも声をかけに行った。さっき聞こえたかもしれないけど、という話し声は昼休みの喧騒に混ざり合っていく。

――やめて。今、思い出さなくていい。一点をもぎ取った時の、高揚感なんて。

「やらないって決めたはずがなぁ」

やりたい気持ちとやりたくない気持ちがぐちゃぐちゃに入り乱れて、私を苛んでいく。胸の奥に閉ざしたはずのエネルギーとキラキラした結晶を無理矢理引っ張り出されたみたいな、そんな感覚がした。