• HOME
  • 起業
  • 株式会社おとも 代表取締役 鈴木貴逹のはじまり

株式会社おとも 代表取締役 鈴木貴逹のはじまり

初めて参入する事業は、毎日が新しい発見でビックリすることも・・・正直落ち込むことも。

でも元気の源はいつも利用者さんで、色んな事を教えてくれるのも利用者さんだった。

利用者さんは、時に先生であり、勇気をくれる暖かい存在だった。

初めての利用者さんは、まだ電車に乗るなどの遠出は怖いという女性の方で、歩いていける範囲で、ショッピングモールへのお買い物の同行だった。

その日は、春先のいい陽気で、天気も散歩には丁度良かった。

初めての同行援護は緊張したが、えいやっとやってしまうタイプなので、気を張りつつも楽しく話をしながら歩いた。

「どこか休憩できるところはないかしら」と、利用者さん。

僕は周りを見渡して、

「あ、ここにカフェありますよ」

「私ね、カフェに入るの6、7年ぶりぐらいかしら」

嬉しそうにその女性は、話してくれた。

僕は、いつも飲んでいるコーヒーがとても特別に思えた。

コーヒーの心地よさが広がるように、心にじんわりと、あたたかいものが広がっていく。

人生の大きな一歩に関われたことに、なんとも言えない嬉しさが込み上げてきた。

目の見える僕たちにとって、カフェに入ることは、なんら特別なことではない。

カフェが目についたら、扉を開けてただ入ればいい。

そしてメニューを見て、好きなものを選べばいいだけだ。

僕の母も最近は買い物に行っても、自分が何を手にとっているか正確には分からなかった。

例えばコンビニのおにぎりとかは、大体綺麗な同じ形をしている。とりあえずいっぱい買って、家に帰ってからロシアンルーレットのように一つずつ味を確認していたことがあった。

改めて視覚障がい者の方が、自分の好きなものを選択するのが難しいことを実感し、やっぱりこのサービスは本当に必要なサービスで、視覚障がい者の方の“楽しい!嬉しい!”をもっと増やしていきたいと心の底からそう強く思った。