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ファミリーヒストリー記録社 代表 吉田富美子のはじまり

父に手渡すと、大切な思い出を振り返るように1ページ1ページゆっくりめくっていった。

ふと父が小学1年生だった頃の写真を見て手が止まった。

本を作るにあたって、本家から貰ってきた1枚の写真。

そこには、父が小さい時に離れ離れになってしまったお姉さんと、お兄さんと私の父、そしてまだ赤ちゃんの弟。きょうだいがみんな揃う幸せな写真。

父の肩が小さく揺れる。
「ここに写っている中で生きているのは自分だけだ。姉も兄も弟も、みんなあの世に行ってしまった」

そう言いながら父の目からは涙が溢れていた。

「泣けてきたよ」

父は小さく呟いた。

この涙は幼い頃に岩手に行ってしまった、大好きなお姉さんのこともあったからかもしれない。

私は大学に行くまで、岩手になんの縁もなかったと思っていたが、自分にとっても実は縁があったんだと父の事で発見することとなり不思議な感覚を覚えた。

父は本を“宝物”と言って、とても喜んでくれた。

心を動かす一枚の写真。

本を見てもそういう力がある。

半信半疑だったが、力のある商品になりそうだと、これで起業しようと決めた。

窓の外を見ると桜が満開、公園、河原、街角のいろんなところで春の訪れを楽しむ声が聞こえてくる。季節は春を迎えていた。

4月、ファミリーヒストリー記録社はサービスを開始した。