町工場親善大使 羽田詩織のはじまり
わたしは雷に打たれ あっという間に 恋に 落ちた
地下アイドルみたいな愛しいあなたを
いつかキラキラした大舞台に連れて行きたい
壮大過ぎって笑うかな
でも夢は口にすると叶うっていうから
私は町工場の“あきもと やすし”のようになりたい
…
19:30 木曜日 チャンネルは10。
私は毎週この日がいつも待ち遠しい。
ワクワクドキドキしながら、テレビの前にスタンバイする。
「私たちに 神のご加護がありますように」
大好きなアニメの決め台詞。
ポニーテールの女の子が、軽やかに空を舞い、マジックを駆使して鮮やかに悪人からものを盗み出し、元の持ち主に返していく。
一生懸命なカッコ可愛いヒロインと、素直に優しさを見せないツンデレヒーロー。
小学生の私は、テレビにくぎ付け。
毎回、エンディングは終わる寂しさと次回の楽しみでちょっと複雑な気持ち。
夏休みの放送は、そんな大好きなアニメ制作の裏舞台の回だった。
いつも見ていたキャラクターがアニメとしてできるまでの制作現場。
初めて見る裏舞台。こんな素敵な世界があるんだ!
ここで初めて“声優”と言う職業を知った。
わたしもキャラクターの中の声をやりたい!
私の夢は“声優”になった。
中高はエスカレーター式で、中学は放送部、高校では吹奏楽部に入った。
私はずっとクラシックピアノを習っていたが、吹奏楽部では初心者なのにホルンを担当することになり、朝から晩まで練習に明け暮れた。吹奏楽部は入部当初、弱小部だったにも関わらず、みんなの努力により全国コンクールで金賞をとるまでになった。
中高と色んなことを経験しても、私の夢はなんら変わらなかった。
高校卒業時、進路は迷わず、声優の専門学校に行きたいと両親に打ち明けた。小学生の時から温めていた私の大切な夢。
「普通の大学に行って欲しい」
親にはそう告げられた。
専門学校の入学金も高かったので、私は、色々考えて普通の大学に進学することにした。
そして、大学に通いながら、バイト代で声優の養成所に通い出した。
養成所のビルの上には、所属事務所もあったが、大学を卒業するまでに所属まではいかなかった。
大学の卒業後の進路を決める期限が迫っていた。
新卒は人生に一度きり。私は一般企業に就職した。
その後、念願叶って事務所に所属もできるようになり、会社を退社し、ようやく声優としての道をゆっくり歩みだした。