町工場親善大使 羽田詩織のはじまり

ある時、ラジオに出演してくれた金属加工の町工場さんのところに、メタルDIYという素人も歓迎の金属加工ができる秘密基地が、工場のロフトにできたとのことで、工場見学に行けることになった。

私は愛しの一眼レフを手に、ドキドキワクワクしながら、工場に足を踏み入れた。

重々しい油の匂い。

火花が飛び散り、まるで小さな花火のよう。

それはまさに異世界。

見たこともない世界。

なんていう衝撃。

もう恋をしたようにドキドキとワクワクが止まらない。

私は夢中でカメラのシャッターを切った。

まあるい回転テーブルに刺さっているエンドミルという機械。

側面を刀で切削し、軸に直交する方向に穴を削り広げる用途に用いられるらしい。

なんて、なんてかわいいんだろう。

全てのものがものすごく魅力的で、私の心をズバッと射抜いた。

私は基本不器用で、折り鶴の口もぴしゃっとなって綺麗にならない。

町工場の部品は、寸分違わず仕上がっていて、とても美しく、なぜ芸術作品と言われないのかが疑問に思うぐらい、技術の高さに感動し、ものすごく尊敬した。

町工場さんは、道具の名前、使い方、全てを丁寧に教えてくれた。

私の中で、あれも作れるのかな、作ってみたいなと気持ちが湧き上がり、町工場さんに相談し、色んなものに挑戦した。

大物の帽子掛スタンドを作ろうとして、溶接部分がフジツボみたいにボコボコになったり、みんなでめちゃくちゃ大きなメタル門松を作ったり。

廃材だって私にとっては宝物。金属の削りカスはクルクルしていてかわいいし、色んな形があるからワクワクする。

もっと多くの人に、一つの製品ができるまで、多くの人が関わっているのを知って欲しくて、廃材でペンダントを作るイベントを開催したりした。

メタルDIYでは、外部の製造業さんと知り合うことも増え、他の工場見学にも足を運ぶようになっていった。

初めての製造業を知ったコマ大戦で作った自作のコマ。

名づけて〝シオリータ1号〟

私は、大事なものをしまう、メガネケースに入れている。

大事な、大事な宝物。

そんな宝物が町工場で色んなことを経験する度、心のメガネケースに収まらないほど増えていった。

そんな中、私は楽しさの中に不安を抱くようになった。

私は悪いことをしているんじゃないか、、

色々なところに工場見学に行くと担当の方が、時間を割いて、説明を丁寧にしてくれる。

私は発注者ではないのに、、

私は自分の好奇心を満たしているだけなのかもしれない。

「君みたいのが必要なんだよ」

悩んでいたのを知った金属加工メーカーの町工場さんが言った。

「外から風穴をバンって開けて、新しい風を吹かせないと進歩しないし、ドンドン製造業に刺激を与えて欲しいんだ」

心のモヤモヤが晴れて、ブレーキが少しずつ、緩んでいく。

「ドンドンやりなさい」

その言葉は、私を元気づけて、背中をトンっと押してくれた。

町工場はシャッターが閉まっていて、近所の人は何を作っているか知らないこともある。

閉めているのには、騒音や温度管理など安全面の理由もあるけど、実際開けることはできなくても、外にアピールはできるはず。

口下手な職人さんはとても魅力的だけど、それじゃ何も伝わらない。

その閉じた扉を開け放って、もっと、もっと町工場の魅力を伝えたい。

私はその扉を開けるお手伝いをしたい。

“町工場はとっても素敵なんだよ”って声を大にしてみんなに言いたい。

私の推しのアイドルの町工場達が、こんな薄暗い地下にいるなんて、もったいない。

私は、日本一の“町工場応援団長”になろう。

私は地下アイドルのような町工場の魅力をもっと知ってもらうために、布教活動にさらに力を注ぐようになった。